あなたのその腕時計。正確に時を刻むのはアインシュタインのおかげ?『GPSと相対性理論』の不思議な関係

あなたのその腕時計。正確に時を刻むのはアインシュタインのおかげ?『GPSと相対性理論』の不思議な関係

「今何時?」とスマートフォンの画面を見たとき、あるいは車のナビやスマートウォッチで現在地を確認するとき。私たちはそれが「絶対に正しい」ものとして疑いません。

でも、ちょっと考えてみてください。空の上、はるか上空2万キロメートルを時速1万4000キロメートルで周回するGPS衛星と、地上にいる私たち。この「圧倒的なスピードと高低差」が、アインシュタインの相対性理論を無視すると狂ってしまうとしたら?

実は、私たちが毎日正確な時間や現在地を知ることができるのは、100年以上前にアインシュタインが唱えた理論のおかげなのです。

時速1万キロの世界で起きてる「時間のズレ」

GPSの仕組みの基本は「時間」の測定です。地上にある私たちの受信機に向けて、GPS衛星が「今何秒です」という電波を発信し、その電波が届くまでの時間を計算することで位置を割り出しています。光の速さは秒速約30万キロ。わずか1万分の1秒のズレが、位置情報では数キロメートルの誤差を生むシビアな世界です。

ここで登場するのが、アインシュタインの「相対性理論」です。相対性理論には、時間の進みが絶対ではなく、環境によって変わるという2つの驚くべき法則があります。

  • 特殊相対性理論(速さの魔術): 動くものは、止まっているものに比べて時間がゆっくり流れる。

  • 一般相対性理論(重力の魔術): 重力が強い場所(地表近く)では、重力が弱い場所(宇宙空間)に比べて時間がゆっくり流れる。

この2つの現象が、上空2万キロを飛ぶGPS衛星の中で同時に、かつ激しく起きています。

衛星の上で起きている「時間泥棒」と「時間加速」のバトル

GPS衛星の中では、毎日この2つの理論がせめぎ合っています。

  1. 特殊相対性理論の影響: 衛星は時速約1万4000キロメートルという猛スピードで動いています。そのため、地上の私たちから見ると、衛星の時計は1日あたり約7マイクロ秒(百万分の7秒)遅く進みます。

  2. 一般相対性理論の影響: 衛星がいる宇宙空間は、地表よりも地球の重力が弱いため、重力の縛りが緩くなります。そのため、地上の時計に比べて衛星の時計は1日あたり約45マイクロ秒速く進みます。

この2つを差し引き計算すると、GPS衛星の時計は、地上の時計に対して1日あたり約38マイクロ秒(45 - 7)だけ速く進むことになります。

「たったの38マイクロ秒?」と思うかもしれません。しかし、光の速さで進む電波の世界において、この38マイクロ秒を放置すると、1日で約11キロメートルも位置情報がズレてしまいます。これでは、カーナビで「右折です」と言われた瞬間に川にダイブするようなものです。

アインシュタインの計算がなければ、スマホのマップは使えない

技術者たちは、衛星を打ち上げる際にこの相対性理論によるズレをあらかじめ計算に入れ、衛星に積まれた原子時計の周波数を微調整(オフセット)しています。

つまり、私たちが日常で何気なく見ているスマートフォンの地図アプリや、ランニング用のGPSウォッチが狂いなく動いているのは、アインシュタインが100年以上前に見出した宇宙の真理を、現代のエンジニアたちがシステムに組み込んでいるからなのです。

科学が生んだロマンを腕にまとう

物理の教科書に載っている難解な数式が、いまや私たちのポケットの中や手首の上で、毎秒のように現実の誤差を修正し続けています。

次に腕時計の文字盤やスマホの画面を見る瞬間、「いま、宇宙と地上の時間のズレをアインシュタインの理論が補正してくれているんだな」と少しだけ思い出してみてください。テクノロジーの裏側にある科学のロマンを感じられるはずです。

 




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