蘇るブロードアロー。語り継がれるレガシー。
腕時計の歴史を見返すと、その技術を押し上げてきたのが『ミリタリー』だという事が分かります。戦場や災害で命を落とさぬ様、堅牢で精度の高い腕時計が求められる場面に、必然的にその技術が飛躍してきたのです。言い換えると「腕時計を含めた当時のミリタリーアイテムはどれも作りが良い」とも言えます。どの時代にもミリタリー愛好家が多いのは納得できますね。
1970年代初頭、当時の世界情勢から軍縮に向かっていた英国軍。その政策の一つとしてパイロットウォッチ規格『DEF-STAN』の見直しが行われることになります。コストカットと並行して、耐久性、精度、操作性のアップも求められました。
供給エボーシュの見直しが行われ、それまで使われていたLemania(レマニア)のモノプッシャークロノから大きく設計を変え、2つのプッシュボタンで操作性をアップしたValjoux(バルジュー)7733が採用されました。さらに誤操作が無いように右側に膨らみを持たせたアシンメトリーなケースがデザインされました。
機能とデザインを含めたこの新しい規格は『DEF-STAN66-4(Part2)』と呼ばれ、以降、80年代初頭までイギリス軍パイロットウォッチの定番となります。
この規格を元に、ハミルトン、CWC、ニューマーク、プレシスタという4つの時計メーカーがパイロットウォッチ製造の依頼を受けます。この4つのメーカーを総称して『Fab Four(ファブフォー)』と言います。
この腕時計には4つの異なるブランドロゴが存在しますが、デザイン、スペックがほぼ同じである理由がそれです。
スペック、ケースデザインは先述の通りです。
ダイアル12時の下に各ブランドロゴがあり、その下に夜光塗料がトリチウムである事を意味する『サークルT』。そして6時の上に英国国防省所有を意味する矢印型のエンブレム『ブロードアロー』が刻印されています。
さて、今回ハミルトンから復刻したブロードアローを見てみましょう。
サークルT、ブロードアローは無くなっていますが、ハミルトン旧ロゴ、針、インデックスはオリジナルの雰囲気を見事に再現しています。ダイアルの表面は粒子の粗いマットな仕上げ。全体的に日に焼けてダメージを受けたような印象です。
夜光塗料はスーパールミノバ。残念ながらトリチウムではありませんが、暗闇での視認性も抜群です。因みにトリチウムには放射性があり人体に悪影響と言われ、現代ではその使用を自粛されています。 ※諸説あり
ケースサイズは40mm。オリジナルから1~2mm大きなっている様です。それでも昨今のクロノグラフは42mm以上の顔が大半。40mmクロノグラフは小顔で特別な雰囲気だど思います。
ラグ幅も2mm程度広くなっている様なので、装着するバンドの質感が大事になってくると思います。重厚感のあるダークブラウンレザーでミリタリー感を演出しています。個人的にはNatoストラップも合いそうな気がします。
厚みは14.35mmでオリジナルより2mm程度アップしています。注目したいのは風防。樹脂製のプレキシガラスから強度の高いサファイアクリスタルに変更されていますが、当時の雰囲気を再現するためにボックス型になっています。
搭載されるムーブメントは『H-51-Si』。ハミルトンオリジナルムーブメントとなっておりますが、Valjoux7753をベースにスペックアップしたムーブメントです。60時間のパワーリザーブにシリコン製ひげゼンマイを採用した最新の手巻きムーブメントです。もちろん現行品なのでメンテナンス体制もしっかり整っております。
※2022年5月時点での分解掃除メーカー価格は¥44,000(税込)
防水性は10気圧。高温多湿の日本の夏にも強い安心仕様ですね。
いかがでしょうか。
コアなファンの多いミリタリーウォッチの中でも特に人気のあるブロードアロー。小振りな手巻きクロノグラフはマニアの心を鷲掴みにしますね。
4社それぞれのブロードアローはアンティーク市場でも稀で、状態問わず世界中で高値の取引がされております。
そして2022年に創立130周年を迎えるハミルトンからの復刻。オリジナルの雰囲気と最新のムーブメントを積んだミリタリーファン、腕時計ファン、ハミルトンファン垂涎のタイムピースですね。
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