徹底解析『Cal.Hシリーズ』【後編】

徹底解析『Cal.Hシリーズ』【後編】

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今回は時計の中身『ムーブメント』に関するお話。

ちょっとコアな話になるかもしれませんが、現ハミルトンオーナーの方にもこれからハミルトンオーナーになる方にも、ぜひ知っておいていただきたいことが沢山ありますので、ぜひ最後までご覧いただければ幸いです(^^♪

多少長編になりますので【前編】【後編】に分けてご紹介していきます。

是非前編と合わせてご覧ください ↓

徹底解析『Cal.Hシリーズ』【前編】

 

前編ではHシリーズの3針を中心にご紹介しましたが、本日はクロノグラフやレギュレーターのムーブメント紹介です。

~クロノグラフ系~
■⑥H-21(縦3つ目クロノグラフ、デイデイト)

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現在のクロノグラフにおいて最も搭載数の多いCal.H-21です。

ベースになっているのは世界で最も使用されているというETA社のバルジュー7750という縦3つ目クロノ。

時計業界の救世主とも言われるこの名機は、オメガのスピードマスターオートクロノ、IWCのポルトキーゼを始めとした様々なモデル、ジン、ロンジン、ティソなどといった名だたるメーカーが採用しており、時計好きにこのムーブを知らない人はいないと言っても過言ではない程の名機です。

ちなみにROLEXのデイトナも以前はバルジューのCal.727を搭載していました。

さて、そのバルジュー7750をハミルトンが独自に改良したのがこのH-21です。

振動数はそのままに、リザーブを60時間まで伸ばすことに成功。実用性をさらに高めたクロノグラフムーブメントとなりました。

それでは、このCal.H-21の基本スペックを見ていきましょう。

【H-21 基本スペック】
直径:30㎜
石数:25石
リザーブ:60時間
振動数:28800
日付表示:日、曜日

ラグジュアリーレンジのブランドでも採用されるムーブをさらに改良したこのCal.H-21は、正にハミルトンの”毎日使える高級時計を提供する”という信念が感じられる、素晴らしいクオリティとコストパフォーマンスを備えたムーブメントです。

■⑦H-31(横三つ目クロノ、デイト)

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さて、先ほどご紹介したCal.H-21の横3つ目バージョンがこちらのCal.H-31。

元になったのはETAのバルジュー7750で、7753同様に名機といわれるクロノグラフムーブメントです。こちらもハミルトンの独自改良により、60時間のパワーリザーブを実現しています。

ベースとなった7753は様々なブランドがベースムーブメントとして採用しており、オメガのスピードマスターレーシングやブライトリングのナビタイマー、パネライの各クロノグラフに搭載されています。

特徴的なのは、デイトの早送りをリューズでなくケースサイドのボタンで行うという点。

大きな話題となった復刻モデル”イントラマティック 68”を始め、カーキオートクロノにも搭載されています。

■⑧H-41(特殊クロノグラフ)

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表と裏で2つの計測ができるこのクロノグラフは、表面では時間表記にデイデイト表記、クロノとしては60秒と30分と12時間の計測が可能となっています。
裏面ではタキメーター、テレメーター、パルスメーターが使用可能。
かなり特殊なクロノグラフムーブメントです。

~スモールセコンド系~
■⑨H-22(スモセコ、デイト)

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ここからはスモールセコンド系のムーブメントです。
スモールセコンドとは、秒表示のみ小さなインダイヤルで表示する方式の事で、クラシックな印象を与える時計に多く採用されます。

このCal.H-22は、レイルロード スモールセコンドに搭載されるムーブメント。ベースはCal.2825で、このムーブメントのスモールセコンド表示を8時位置に変更したのがH-22です。

直径25.60mm。リザーブは42時間となっています。

■⑩H-32(スモセコ、デイト)

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こちらもスモールセコンドのオートマチックムーブメント。
搭載するのはカーキネイビー パイオニア スモールセコンドの43㎜。

このムーブメントは情報が少ないのですが、個人的には日付の調整時にリューズを時計まわりに回転させることから、おそらくCal.2824系統だと予想しています。
2892-2と2895-2だと反対周りですからね。
とは言ってもそこまで違いはなく、クオリティの高いスモールセコンドムーブメントだと言えます。

~特殊系~
■⑪H-13(パワーリザーブ表示)

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こちらはジャズマスター パワーリザーブに搭載されているムーブメント。

通常、オートマチックムーブメントの動力ゼンマイがどれくらい巻かれているかを視認することはできませんが、このインジケーター表示があることでエネルギー残量を一目で確認することができます。
80時間というリザーブをより使いやすくするちょっと贅沢な仕様です。

■⑫H-12(レギュレーター)

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こちらはレギュレーターオートに搭載されるレギュレータームーブメントです。

ベースはCal.2825-2ですが、時・分・秒表示が同軸ではなく、別々になっています。独創的な形ですが、元は時計師が時間を読み間違えないようにと、自らの為に開発したのがスタートでした。

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以上がハミルトン12ムーブメントの紹介となります。

同じハミルトンの時計でも、その仕様やデザインによって搭載する機械は違ってきます。
しかも、ブランドは違っても同じベースムーブメントを使用していたりと、探っていけば探っていくほど新たな発見があって本当に面白いです。

私個人の意見としては、現状50万円アンダーの時計ブランドで考えればハミルトンを始めとする、ETA社のムーブメントを搭載する時計を選んでおいた方が吉だと考えております。

というのもその安定性とメンテナンス性は本当に多くのメーカーに指示され、90年代においてはスイス時計の9割がETA社のムーブメントを搭載していたといいます。

その後、ETA社の方針変更により2020年をもって同グループ以外のブランドはETAを使用できなくなるため、各ブランドは一斉に完成品の値上げやセリタというエボーシュへの切り替えを行いました。

もし、ETA社が方針を変えずこれまで通り部品の供給を行っていれば、機械式時計の値上げはここまで大きいものではなかったでしょう。
もちろんそれが各ブランドの開発意欲を高めたことも否定はしませんが、これによりスウォッチグループに所属するETAを使用できるブランドのコストパフォーマンスが、他ブランドと比べて抜きん出ることになったのは周知の事実です。

そこにデザイン性やブランドの歴史、アフターサービスの充実度を加えると現状30万円アンダーでハミルトンに並ぶブランドは無いように感じます。

 

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