【実機レビュー】ティソPR516クロノグラフメカニカル

【実機レビュー】ティソPR516クロノグラフメカニカル

TISSOT PR516 CHRONOGRAPH MECHANICAL ref.T149.459.21.051.00 ¥273,900(税込)※2024年4月時点

昨今PRXの世界的ヒットを成功させたティソ。もちろん世界での知名度は既に高いのですが、ようやく日本国内でもよく目にする時計ブランドとなってきました。特に若い世代からのニーズが飛躍的に高まっており、ハイセンスでハイスペック、そして手に入れやすい価格の腕時計を求める方々に刺さるアイテムを供給し続けています。

更に時計業界のトレンドでもある『復刻ブーム』においてもティソは注目を集めており、170年以上にも及ぶ重厚な歴史の中から様々な歴代アイテムを、いずれも時計愛好家達をうならせるリデザインとタイミングで行ってきました。

そして2024年2月のPR516シリーズ復刻のローンチ。これは直前まで情報規制されており、我々正規販売店のスタッフでさえまさに寝耳に水のタイミング。実に驚きました。
しかしながらPRX復刻、そして2023年のシデラル復刻を考えると、1970年代の個性あふれる時代からの復刻は容易に予想でき、今回のPR516の復刻を予知していた愛好家達も多いのではないかと思います。

まずは公式の素材画像で復刻(上)とオリジナル(下)を比較してみます。

「そっくりそのまま」では無いですが、見事に現代風にアレンジされています。当時の36mmも見てみたかったですね。それでは実機を見ていきましょう。

全体的にスポーティなデザイン。70年代や80年代に流行したモータースポーツのテイストを含んだ40代~60代の男性が好みそうな感じです。ティソのクロノグラフ系のアイテムは比較的ケースが角張ったモノが多い気がします。これはメーカーの好みでしょうかね?
昨今シンプルな3針、もしくは2針タイプの腕時計がフューチャーされていますが、やはりクロノグラフと言えばワンランク上の憧れの機械式時計であり、ここにきてのPR516の復刻は、シンプルと言うカテゴリーでマンネリ化しつつある時計業界に、再熱の刺激を与えてくれるのではないかと思っております。

【ケース】

ケースサイズは41mm。オリジナルの1970年代のPR516は36mmだったとの事ですが、これは現代風にアレンジされたと考えた方が良さそうです。今は小径を好まれる愛好家がホントに増えたと感じますが、まだまだ一般的には40mmや42mmが主流です。より多くの方に好まれる様なサイズ感での復刻となりました。とは言えクロノグラフで41mm以下は個人的にはグッとくるサイズですね。

ケース素材は316Lステンレススチール。医療用のメス等に使われるアレルギーの出にくい素材です。

防水は10気圧(100m)。リューズやボタンに直接水圧が掛からない様にして頂ければ、着用後に洗面台でじゃぶじゃぶ洗う、なんてことも可能です。

【風防】

風防の素材はサファイアクリスタル。モース硬度9(ダイアモンドが10)のご存じ高級素材です。これも当時の雰囲気を醸し出すようにボックス型になっており、サファイアクリスタルのボックス加工だけでもコストが上がってしまいそうです。

【ベゼル】

ベゼルはミネラルベゼルリングとなっており、セラミックよりランクを落とした素材を採用しております。これにより大きくコストを下げておりますが、素材のランクを落としても、見た目の良さや強度を上げる事が出来るティソの技術には驚かされます。表面の傷に強く、セラミックと同じ様な感覚で使用できると思います。今後ティソはこのミネラルベゼルリングが主流になるかと思われます。
ベゼルにはタキメーターが印字されており、ストップウォッチと組み合わせる事により様々な計算をする事が出来ます。(実際には使ったことはありませんが・・・)

【ダイアル】

現時点でのカラーは今回のパターンのみとなります。ブラックダイアルに三つ目のクロノグラフ顔。バトン型の、良い意味で玩具の様な時針と分針。ベゼル部分の白いラインと30分積算計部分のライトブルー、そして存在感のあるオレンジの針こそが1970年代。レトロとまではいかずとも、どこかノスタルジックな雰囲気に仕上がっていると思います。

【ストラップ】

ケースと同じく316Lステンレススチール。ドーム型の形状とテーパーが効いたデザインとなっており、こちらも当時の雰囲気を再現しながらも堅牢性を飛躍的にアップさせたメタルブレスに昇華しております。インターチェンジブル機構を採用しており、ご自身で簡単にストラップの交換が可能です。
正直なお話、ティソのストラップに関しては少し簡易的な作りが多く感じます。他の高級時計と比べると「まあまあ違うなぁ」と思うかもしれません。しかしながらこれにより価格が大幅に抑えられていますので、十分納得出来る作りではあると思います。

 

【ムーブメント】

ここからが時計愛好家達をうならせる垂涎のパートとなります。搭載するムーブメントは『ETA/バルジューA05.291』。名機と言われる『バルジュー7753』を手巻きにチューンナップした機械となっておりますが、ここに様々な最新技術が反映されています。

まず、バレルの機構を再設計しクロノグラフでありながら68時間のロングリザーブを実現しました。さらにこの新たな機構は、ゼンマイが解ききれる前の精度の低下を防いでくれるという事です。
そして『ニヴァクロン製ヒゲゼンマイ』。ニヴァクロン社が開発した磁気帯びし難い金属をテンプに組み込むことにより、現代で最も深刻と言われる磁気によるトラブルを大きく軽減してくれます。

ベースとなるムーブメントのグレードはエラボレグレード。最高級のクロノメーターよりは低いグレードとなりますが、ティソはレーザーによる精密調整を行いクロノメーターと同じ程度の精度と安定性を実現しております。毎時28,800振動(4Hz)、日差±5秒。

円錐の角度とバネの形状を最適化した『NIVACHOC Aシステム』により、耐衝撃性を大幅にアップ。機械式時計の最大の弱点、衝撃に関しても大幅に耐久性が上がっていると言う事ですね。

さて、上記の垂涎のパート。個人的には驚愕の技術をお話ししているつもりですが、正直、実用においては全て『誤差』程度なのだと思うのが一般論です。機械式時計はやはり『止まる』『ズレる』『磁気に弱い』『衝撃に弱い』が常識。しかしこの些細に思える進歩こそが時計の世界の正義ですし、我々時計オタクたちが夢爆ぜるポイントなのです。ご理解頂けると嬉しいです!

 

いかがでしょうか。今回のティソの新作PR516クロノグラフメカニカル。既に国内外のメディア、そして愛好家達の間で高く評価されている様ですね。このスペックとデザインで30万円アンダーの腕時計を出してくるティソ。流石です。個人的にも忖度なしに「他のメーカーが作ったら60万円~80万円はするだろう」と自信をもって言えます。

 参考になればうれしいです。素敵な腕時計ライフをお送りください!

 

~合わせてお読みください~

【商品ページ】ティソPR516クロノグラフメカニカル

【ブログ記事】スイス時計産業の未来を担う巨人『TISSOT/ティソ』

 

 

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